超音波の基礎原理を学ぼう!

アーチファクト(artifact)

アーチファクト(artifact)を直訳すると「人造物」「工芸品」「人工産物」「人為構造」「加工品」等のことであるが、信号処理や画像関連では発生した「データのエラー」や「信号のゆがみ」「人工的な効果, 乱れ」等を指すことが多く、超音波診断では「虚像」「偽像」「歪み」などと訳される。

 

超音波診断においてアーチファクトは誤診・所見の見落としにつながる他、特徴的な像を呈するケースにおいては、診断にあたって有用な情報源として活用できるものもあることから確実に理解しておきたい部分である。

 

アーチファクトには次のようなものがあるが、その原因となる超音波の持つ特性や生体内での挙動、診断装置について理解することが重要である。

 

・サイドローブアーチファクト
・グレーティングローブ
・多重反射
・ミラー現象
・音響陰影と後方エコー増強
・繰越しによるアーチファクト
・レンズ効果
・ビーム幅による虚像

アーチファクト

超音波検査時においてアーチファクトの出現する原理を理解することで、アーチファクトを軽減させたり、出現させないための手技的な技術や装置の調節など方向性を見出すことができるケースも多々ある。

 

またアーチファクトから存在診断や鑑別診断に至る病変もある。アーチファクトは時に検査の邪魔になったり、時には検査の役に立つこともあることから、超音波診断を施行する技術者にとっては必要不可欠な超音波原理の知識だと思う。


超音波検査のアーチファクト記事一覧

サイドローブアーチファクト

超音波ビームには送信方向の中心軸上に出る音圧の高いメインローブ(主極)と中心軸から外れた方向に出る音圧の低いサイドローブ(副極)がある。サイドローブ上に位置する反射体からの信号とメインローブからの反射信号が同時に受信されることによってできるアーチファクトをサイドローブアーチファクトという。球面波相互...

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鏡面反射(ミラーイメージ)

横隔膜のように強い反射体が存在するケースでは、反射体を挟んで等距離に鏡に映したような像が出現することがあり、これを鏡面反射(ミラー効果)という。超音波ビームの進行方向に対して比較的強い反射体が斜めに横切る部位で発生しやすい。

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多重反射

超音波が平行に向かい合った狭い反射体同士の間で何回も反射を繰り返すことによって発生するアーチファクト。発生源の後方に等間隔で幾重にも画像化してしまう。彗星の尾の部分に似ていることから「comet tail echo」と呼ばれるアーチファクトも多重反射が原因となって発生するアーチファクトの一つである。

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音響陰影と後方エコー増強

殆ど全ての超音波が反射を起こすような音響インピーダンスに差がある組織境界面より後方には超音波が透過できない。この部分にできる無エコー域を音響陰影(Acoustic shadow)という。

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屈折によるアーチファクト

超音波の生体内特性により、ある条件下(音速の異なる境界に斜入射した場合)で超音波ビームが屈折する。超音波の屈折は、画像を歪ませたり、位置を左右方向へずらして表示したり、二重に表示されたりすることがある。また、超音波が屈折することによりビームが到達しない領域ができることもあり、その代表が腫瘤外側後方に...

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グレーティングローブ アーチファクト

アレイプローブにおいてスラント(電子偏向)により超音波ビームを偏向させた際、微小振動子の球面波相互干渉により意図した方向と同じ角度で反対側に形成される擬似的な音圧分布(ローブ)を「グレーティングローブ」と呼び、この時グレーティングローブからの反射信号をメーンローブ上に表示することで発生する虚像は「グ...

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